私のカナダ訪問 ’08


       私達は2008年10月12日から10月18日まで
           第六次カナダ訪問を行いました。

             

                                


         世界でも精神保健システムの進んでいるカナダ西海岸の都市ヴァンクーヴァー

            
    私たちは万感の想いを込めて7年ぶりに訪問した。

      
そこで行われていたのは斬新なリカヴァリとピアサポートを中心にした充実したケア

   
    入院は最低限、進んだ住居提供、就労復学への積極的な取り組みと
                 当事者同士のピアサポート

     一方で以前のGVMHS(大ヴァンクーヴァーメンタルヘルスシステム)は縮小して
          VCMHS(ヴァンクーヴァーコースタルメンタルヘルスシステム)
              という福祉団体がケアを担っていた。
                   
              世界的不況の影響もあるのだろうか。
            
           しかしその充実ぶりは大いに学ぶべきところがあった・・・・


 ★施設紹介


     ●Coast Mental  Health Seymour Resource Center
          (コースト メンタル ヘルス セイモア リソース センター)

                    


         旧Drop in(ドロップイン ぶらっと立ち寄れる場所)で、ヴァンクーヴァー中心地
      から徒歩圏内に普通のお店の隣にある。
      数名のソーシャルワーカーとボランティアスタッフがおり、地域で暮らす当事者の
      生活相談や相互交流の場。
      一階は100人から入れるコミュニケーションスペース、 スタッフルーム、キッチン
      などが、二階には絵を描いたり卓球を楽しむスペースがある。
      練馬の障害者生活支援センターきららを思わせるが規模は格段に大きい。
      当日はBC州の選挙があり、その結果をみんなで話合うと言っていた。
      日本語が達者な当事者もいていつか日本に行きたいと話していた。
      人気のサーヴィスは食事提供で朝食50セント(約45円)、昼食1ドル(約90円)で
      食べられるとのこと。


    
●UBC(ブリティッシュコロンビア大学)精神科病棟
      
              
             



         私たちが第一次から第三次まで訪問の時、そこのゲストハウス(療)に泊まった懐かし
      いUBCにある、精神科病棟。
      教育用ビデオ、本、DVDなどが豊富にそろっている。
      ボランティア(主に学生)によって運営。学生のメンタルヘルスも担当。
      障害年金受給者、生活保護者の医療費は無料。
      福祉の情報に力を入れている反面、電気ショックなどが行われており、
      MRIなどの設備は無く、最先端の脳科学の情報に乏しかったのが残念である。
      ヴァンクーヴァーでは市内の精神病院の病床は廃止の方向にあり、又郊外にある
      リヴァヴュー病院も閉鎖の方向にあるという。

    
●Coast Mental Health Club House
          (コースト メンタル ヘルス クラブ ハウス)

       
   


        いわゆるCost Foundation(コースト財団)の本部兼クラブハウス。
     NPO法人で住居の斡旋、就労支援、クラブハウスの運営を担当している。
     職員は300名、年間16億円の予算で運営される。
     職員になるには7〜8ヶ月のコースでライセンスを取得することが必要。
     アパートやグループホームを経営。市内の不動産業をビジネスとして事業展開し
     ている。就労はメンタルヘルスチームが助けて斡旋、助成を行っている。
     他にソーシャルエンタープライズという事業展開を行っており、積極的なイヴェント
     を利用した寄付募集や、造園業等に手を出すなどの試みも行われている。
     クラブハウスとして、当事者の交流の場にもなっており、私たちはカフェテリアで
     1ドルのラザニアをご馳走になった。


    
●Coast Mental Health PACT
     
(コースト メンタル ヘルス パクト)

         

      
PACTは25年以上、精神障害者に就労サーヴィスを提供してきた。
      スタッフは9名で、週80〜90名位の受給者がいる。
      個人に合った職種。具体的には道路清掃・メンテナンス(オリンピック景気で需要
      が多い。地域に理解されやすい。)、レストラン・キッチンの消毒、裁縫、トラックや
      バスの運転手、歯科衛生士、セラピスト(ピアサポーターとして訓練の後、独立する
      ケースも含む)、造園業(コーストが経営)等。
      収入は障害年金受給者には年金に加えて400ドル(3万6000円程度)までOK。
      多くは時給9ドル(810円程)から10ドル(900円程)で週に4〜6時間程。
      現在90人程が雇用されている。
      SEF(Cost Social Enterprise Foundation)は、PACTを通してクラブハウスで訓練
      (過渡的雇用は6ヶ月間の訓練後)を受けたメンバーを雇っている。
      過去の職歴を調査し、自分に合ったゴールを設定し、復職・復学のプログラムを立
      案しサポートする。その際心理士による適正テストなどを受ける。
      雇用主探しは審議会や口コミによるものが多く、EAC(Employer Advisory Concil)
      によって、相談者に知識を与えて就労に関するアドバイスや雇用者側のサポートも
      行っている。
      練馬のレインボーワークでも同じように職業訓練(一日と一週間)、ハローワークと
      連携しての雇用主捜し、JOBコーチ・サポートなどを最近始めたが、日本の法定雇
      用率では最低時給が791円で、週20〜30時間働いているケースが多いとのこと。
      職種も清掃、喫茶、パン屋などが多いが、最近事務職も増えているということであ
      るので、参考にされたい。


       ●アナンダ・ハウス

                

         グループホーム地下一階、地上二階建て。閑静な住宅街にあり、日本のアパート
      と違い、入り口は一つ。セントラルヒーティング付きで広い一軒家にそれぞれの居室
      がある。定員は20名で入居年数制限なし。現在10名が利用。男女比は7:3。
      食堂兼活動交流室が玄関を入ってすぐにあり、20畳ほどの広さ。
      利用料は3食付で一日約3000円。
      職員は常勤と非常勤があり、7時から15時・15時から19時という体制で交代勤務。
      各部屋に電話は置かず、施設に一台。
      前訪れたときはテレビは各部屋に無かったが、今回は各部屋に設置。
      服薬管理は厳しく専用の鍵付き(職員が管理)の薬棚がある。
      環境はいい反面、自由がほしければ金を払いなみたいな合理主義も感じられた。
      コーストでは新興の商店街ができれば、積極的にこのような住居を獲得しているが、
      まだまだ足りない面もあることも否めないらしい。


     
●フランシスコート

        

         障害者専用のアパート。それぞれが玄関を持つ個別の住宅になっている。その他、
      キッチンや食堂など共同のスペースがある。私たちは丁度サンクスギヴィングスデイ
      のおいしい七面鳥料理をたらふくご馳走になった。一緒に食事を作ったり相談できる
      管理人が一名居り、この他当事者同士のピアサポートや住人による店子委員会(大
      家はコーストである。)がある。
      ご馳走のお礼に私たちは「よさこい踊り」を披露した。また第三次訪問で訪ねたときに
      もいた、熊のぬいぐるみを抱えたT氏とも再会し一番楽しい一日となった。
      現在、このようなアパートをコーストは積極的に探しているが、高齢化による合併症が
      問題であるとのことであった。


    
●Gastown Vocational  & Educational Services
     
(ギャスタウン ヴォケイショナル & エデュケイショナル サーヴィス)
       
                

         古い大陸横断鉄道の駅舎跡が美しい、イングランドの街並みが残る小雨の中の
      ギャスタウン。その一画にあったのが、この就労支援機関であった。丁度日本の
      ハローワークのようなところであったが、重厚な造りのきれいなオフィスであった。
      所長やJOBコーチ兼ピアサポートワーカー(つまりリカヴァリを果たした当事者なの
      だ。)や、JOBディベロッパーの方々が歓迎してくれた。
      ここでも自分のゴールを具体的にし、所謂「早期リカヴァリ」という概念で短期間で
      も職業経験があれば、なるべく復職するという考え方であった。
      精神障害の他に依存症や、パニック障害の方などに対象を広げてサポートを行っ
      ている。また、16〜30歳、それ以上の年齢に分けての Youth & Young Adult
      Educational & Enployment Program  があり、就労のための教育、また雇用主
      への啓蒙、普及活動が行われていた。彼らにより、ニーズに応じて当事者をマッチ
      ングさせること、徹底したJOBコーチなどについて熱く語られた。
      何よりピアサポートワーカーがちゃんと働いているのには驚かされた。


    
●THEO・BC
          (セオ) 

            

        ヴァンクーヴァーの郊外の古い木工所のそばに、その施設はあった。
     ’73年に作業所として発足したこの施設は日本で言えば就労継続支援A型事業所
     にハローワークを合わせた機能を持っていた。就労プログラムと教育・レジャーのプロ
     グラムを併せ持つ所だ。就労プログラムではやはり個人のゴールを明確にし、ヴォラ
     ンティアから始めて、パートタイム、フルタイム、自営業へと、スキルアップしていく。
     そのために複数のカウンセラー(ピアを含む)からなる無料のワークショップが多数用
     意され、それにのっとて訓練が行われる。 
     教育・レジャープログラムはより人間関係を重視したもので、ゴルフ、水泳などのスポ
     ーツ、ダンス、アート、ガーデニングなど多岐に渡っている。またお国柄からか異文化
     交流も重視し、移民達に英会話を教えるなどしている。さらに高齢者のクラブもあり、
     日本の作業所の様に十把一絡げな対応では無く、それぞれのニーズにあったサーク
     ルがより大規模に運営されていた。


      ●ピアサポートプログラム

                      

        ピアサポートとは、当事者がカウンセラーとしての訓練を受け、同じ病を持つ当事者
     をケアし、お互いのリカヴァリに繋げていくこと。医療従事者には解らない、当事者な
     らではの同じ経験を生かして行う、治療の一環としても注目されている制度である。
     ヴァンクーヴァーでは、’01年にピアサポートのためのマニュアル(現在練馬ではそれ
     を鋭意翻訳中で来たるべきイヴェントで公開し、地域生活支援センターでも生かしてい
     くつもりである。)を作成し、ピアサポートコーディネーターを置いたピアサポート賛助委
     員会を設置している。ピアサポーターになるには、まず州や市の広告を見て応募し、書
     類審査経ての面接の後に犯罪歴をチェックされ、それに合格したところで、6ヶ月の研
     修を受けなければならない。一旦ピアサポーターになると月最低50ドル(約4500円)
     の報酬が保証される。ピアサポーターはそのクライアント(相談者)と密接な信頼関係
     を築き、喫茶店などで話し合いを行う。その費用の一部は州の公的機関(賛助委員会
     を含む)によって、返償される。日本でも非公式に行われている行為でもあるが、ここ
     まで徹底的に制度化されていることに驚いた。


                   

                            

         ヴァンクーヴァー 私に勇気と希望をありがとう!!!
          オリンピック成功おめでとうございます

         




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